こんにちは アサです
健康な心と体を作るのには体に取り込むもの、つまり「食べ物」を考えることが肝心要になります。
漢方的な視点から見た「食」について、まずは「薬膳」とはなにか、というところからご紹介します📜
■薬膳とは
「薬膳」と聞くとどんな料理をイメージしますか?
薬っぽい、精進料理みたい、敷居が高そう…など
色々あるかと思いますが、あまり親しみのある言葉ではないですよね…
このようなイメージがある一番の理由は、薬という文字が入った字面そのものにあるのかと思います。
文字の構成的に最初に「薬」がくるため「薬の膳」と捉えられ、薬っぽくて美味しくなさそうなイメージが湧いてしまうのですが、言葉を後ろから読んで「膳が薬になる」と捉えると本来の意味に最も近いニュアンスになります。
×【薬→膳】=薬が料理…薬っぽい料理というイメージ
〇【薬←膳】=料理が薬…料理が薬としての役割になる
後ろの漢字「膳=料理」が前の漢字「薬」の主語になってると読み取れば「薬膳」という言葉が最初とは違った印象になるのではないでしょうか😌
❑膳が薬
料理が薬になるという考え方の漢方には
食べ物も薬も同じという意味の「薬食同源」という言葉があり、
その考え方こそが「薬膳」の根幹ともいえます。
食材にはそれぞれどこの臓腑に一番影響を与えるか、体を温かくするのか冷やすのかというように、
心と体に与える影響が異なり、程度の違いにより食材になったり、薬になったりします。
具体的には「食材」「生薬」「食薬」の3種類に分けられます。
食材
日常的にとる食べ物、私たちが最も身近に感じ、目にするものです。
➣🌾米、イモ類、野菜、果物、魚、肉など
生薬
いわゆる薬の役割として漢方薬の材料になるような動植物、鉱物がここに含まれます。植物系、動物系、鉱物系の3種類があるなかで植物系が大半を占めています。聞き慣れないものも多いかもしれません。
❑🌿植物系…葛根(葛根湯の葛根)、麻黄、桔梗、甘草、陳皮(みかんの皮)、附子(トリカブト)、薏苡仁(はとむぎ)など
❑🫎動物系…鹿茸(鹿の角)、熊胆(熊の肝)、真珠など
❑💎鉱物系…石膏、竜骨など
食薬
食材と生薬の両方の役割として使われるものがこれにあたり、
私たちの身近な食材もここに含まれるので薬効として使ったことがあれば、なるほど~と感じるものも多いかと思います💡
食が薬になる、食と薬が同じという考え方がよくわかるカテゴリーです。一般的な食材としての名前とは別に薬としての名前【生薬名】も持っていたりします。(食材名と生薬名が同じものもあります)
❑🫚山芋【山薬】、りんご、生姜、梅、茗荷、紫蘇、ミント【薄荷】、シナモン【桂皮】、アロエなど
このような分類があることを踏まえ、体調によって身体に取り込むものを意識していくことが食養生に繋がります。それでは次に、常食として私たちの最も身近な「食材」にフォーカスしてその性質を見ていきましょう。
■食材の性質
食材はそれぞれが複数の性質を持っていているため身体へ与える影響が異なります。例えば身体を温めるのか冷やすのかといったように寒暖の性質を表した「五性」や、食材そのものが持つ「味」の性質を表した「五味」などがあります。
五性
食材には身体を温める性質があるのか、冷やす性質があるのかを「寒」「涼」「平」「温」「熱」の5段階で分類し、これを「五性」といいます。
🟦寒=身体を「涼」よりさらに冷やす
食材の例…レンコン、もやし、にがうり、タケノコ、蟹、アサリ、ひじき、昆布、スイカ、バナナ、塩など
🟩涼=身体を冷やす
食材の例…粟、ハトムギ、トマト、キュウリ、ナス、大根、鴨肉、豆腐、りんご、梨、みかん、レモン、緑茶など
🟨平=寒涼温熱に属さず常用できる
食材の例…米(白米/玄米/黒米)、いも類、枝豆、たまご、梅、しいたけ、ぶどう、牡蠣、豚肉、黒ごま、はちみつなど
🟧温=身体を温める
食材の例…もち米、ネギ、にら、にんにく、海老、鮭、イカ、鰻、鶏肉、牛肉、桃、黒糖、紅茶、酒など
🟥熱=身体を「温」よりさらに温める
食材の例…ラム肉、唐辛子、コショウ、シナモンなど
また、「五性」を陰陽の視点でみる考え方もあります。寒涼を陰、温熱を陽というかたちで陰陽としても捉えられ、これを季節の陰陽と合わせると…
陽の季節である春夏→陰の食材で体の熱を冷ます
陰の季節である秋冬→陽の食材で身体を温める
このように考えることができます。
五味
食材にはそれぞれ「酸」「苦」「甘」「辛」「鹹」という五つの「味」があります。これは必ずしも食材を口にしたときに舌で感じる味覚と一致するわけではなく、あくまでも身体そのものが影響を受ける「味」という見方をします。また、一つの食材に複数の「味」がある場合もあります。それぞれの「味」の効能を見ていきましょう。
❑酸味
身体をひきしめて、汗や尿の漏れを抑える働きがあるので…
💡こんな症状に効く➣汗が止まらない、下痢など
食材の例➣梅、レモン、酢など
❑苦味
身体の熱を冷ましたり(清熱)、便を下す(瀉下)働きがあるので…
💡こんな症状に効く➣発熱、目の充血、便秘など
食材の例…にがうり、緑茶など
❑甘味
痛みや緊張を和らげたり(緩和)滋養強壮(補益)の働きがあるので…
💡こんな症状に効く➣緊張、疲労など
食材の例…とうもろこし、かぼちゃ、キャベツ、ナス、タケノコ、枝豆、はちみつなど
❑辛味
発汗で邪を払ったり(発散)氣血を巡らせて滞りを改善(理氣/理血)する働きがあるので…
💡こんな症状に効く➣かぜ、消化不良など
食材の例…ねぎ、大根、シソ、しょうが、にんにくなど
❑鹹味=塩味
かたいものを柔らかくしたり(軟堅)便を下す(潤下)働きがあるので…
💡こんな症状に効く➣腫瘍、便秘など
食材の例…イカ、カニ、くらげ、昆布、海苔など
■食材の色と五臓
ひじきは髪にいい、キャベツが胃もたれにいい(キャベジンという薬もありますよね)、ナッツ類は美容にいい、しじみが二日酔いに効く…など、深い事情は知らなくても食材の効能が身体にいい影響を与える知恵をいくつか聞いたことがあるかと思います。実はこれ、食材の色が関係していたりするんです!
漢方では食材の色にも意味があると考え、大きく「青」「赤」「黄」「白」「黒」の5色にわけてそのまま「五色」と呼びます。そして身体に不調が出た時、五臓「肝」「心」「脾」「肺」「腎」に対応する色の食材を取ると不調の改善に繋がると考えます。
五臓の主な働きとしては☟
肝…氣/血を巡らせる、精神の安定など
心…血を巡らせる、精神の安定など
脾…栄養を氣血水に変えて全身に送るなど
肺…氣を巡らせる、外邪(病の原因となるもの)から体を守るなど
腎…生命維持機能、精氣を保つなど
それぞれの五臓の不調に繋がる感情とも合わせてそれぞれの色の特徴と効能を確認していきましょう(その感情になることで五臓の不調が起きる)
🟦青
肝の不調に効く=【怒り】の感情の緩和
食材の例…キャベツ、レタス、ほうれん草、にらなど
🟥赤
心の不調に効く=【喜び】の感情の緩和
食材の例…トマト、にんじん、スイカ、鮭、くこの実など
🟨黄=【思い悩む】の感情の緩和
脾の不調に効く
食材の例…とうもろこし、かぼちゃ、たまご、オレンジなど
⬜白=【悲しみ/憂い】の感情の緩和
肺の不調に効く
食材の例…山芋、大根、れんこん、豆腐、白ごまなど
⬛黒=【恐れ/驚き】の感情の緩和
腎の不調に効く
食材の例…しいたけ、牡蠣、ひじき、海苔、黒豆、黒ゴマなど

食材の栄養など詳しい効能を覚えるのは大変ですが、色からイメージするとわかりやすいですよね!
食材の色を意識してみると視覚的にも楽しく食事ができるのでぜひ参考にしてみてください🙌
伝統料理から受け取れるヒント
北海道から沖縄まで南北に長い日本は気候の差がが顕著に出るのでその地でよく採れたり、使われる食材にも違いがあります。
例えば寒さの厳しい北海道では身体を温める熱性の強いラム肉を使ったジンギスカンが有名ですよね。
また、身体を温める鮭の漁獲量が北海道、青森、岩手の北の3県が上位でよく採れる地域という事実も注目ポイントです。また南の沖縄ではゴーヤチャンプルーが有名ですがこれも身体の熱をとる働きが強い寒性のゴーヤと涼性の豆腐を使っているので熱い地域ならではの料理といえます。
自然の奥深さを理解し日常に取り込んだ昔の人々の知恵がそのまま現代にまで生きていると思うととっても感慨深いですよね。鮭がそこにたくさんいる事実からは地産地消が大事だという考え方への理解も深まります。
つまり「薬膳」とは、その日の体調や気候、その人個人の体質に合わせて食材の性質を意識して選び、料理するというものです。五性、五味、五色すべてを覚えなくても、まずは一日の食べ物で5つの色があったかな~と氣にしてみるのも楽しいですよ!
自分の身体と相談しながら食という養生法で正気を高め、病気にならない体づくりをしていきましょう🙌
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