漢方薬こそ認められていますが、現在の医学の主流は西洋医学という位置づけとなっています。
それはひとえに未病という「病気にならないようにする」という東洋視点の考え方よりも
西洋視点の「病気になったら治療する」という考え方の方が浸透しているからだといえます。
西洋医学と東洋医学にはどちらも得意なこと、苦手なことがあるのでどちらかに傾き過ぎず
状況によって使い分けて行くことが理想的です。
それぞれの医学の特徴を確認した上で、旧字体の「醫」についても掘り下げて考えていきます📜
■西洋医学と東洋医学(漢方)
さまざまな角度からの比較によってより双方の医学の理解が深まるので、
まずは西洋医学と東洋医学(漢方)のそれぞれの特徴を表で確認してみましょう🙌
西洋医学 | 東洋医学=漢方 | |
根柢にある理論 | 近代科学に基づく理論 実験により更新が多いため淘汰が早い傾向がある | 自然哲学に基づく理論 普遍の象徴ともいえる自然/哲学が根柢にあるため淘汰があまりない傾向がある、普遍の理論ともいえる |
病の考え方と対処 | 心と身体、身体の中の各臓器はそれぞれが独立して機能していると考えるため、病気になった場合はその原因の箇所を突き止めその部分を局所的に取り除こうとする | 心と身体、身体の中の各臓器は密接に関係して影響を与え合っていると考える、つまり心身のバランスが崩れると病気になると考えるのでバランスを正そうとする |
薬の成分 | 化学合成薬 実験を繰り返しどんどん新しい薬が 開発されていく | 自然薬=漢方薬 古代から受け継がれてきたものがそのまま使われているものが多い、自然由来の動植物が使われている |
薬の処方 | 病名を付け病気そのものに着目するため、同じ症状なら処方する薬も同じ | 心身の不調を総合的に踏まえ患者本人に着目するため、同じ症状(病名)でも 処方する薬が異なる |
得意分野 | 急性の症状による外科的な処置 手術など外傷の修復、ウイルスなどの感染症の治療など | 慢性の症状による内科的な処置 アレルギー疾患、自己免疫の回復など |
■「醫」という旧字体について
医者、医学、医療、のような形で使われている現在の漢字「医」は、
「醫」というかなり画数が多い難しそうな字が使われていました。さらにこの字の前には「毉」という字が使われていました。
毉 ➣ 醫 ➣ 医
旧字体の漢字に比べると現在使われている「医」の漢字はだいぶシンプルになりましたよね
かなりの情報量の「醫」を構成する字を分解すると「医」「殳」「酉」という字が含まれています。
分解して一つ一つを読み解き「醫」に込められている意味を確認してみますと…
参考文献 白川静 (2003) 『常用字解』平凡社
医
医を囲む「匸」は隠された場所、箱という意味で
その箱の中に悪霊を祓う力のある「矢」が入っている状態を表しています。
殳
「殳」を構成するそれぞれの意味「几」=武器/「又」=手
これが合わさり「手に武器を持っている」様を表しています。
「殳」には「打つ」という意味があります。医と合体して「殹」となると
「矢を打つ」という意味になります。
昔は病気が悪霊のしわざだと考えられていたため、悪霊を祓う=病を治すのは巫の役目だったという由来から「殹」と「巫」が合わさり「毉」という字が使われていたこともあります。やがては病の原因は自然界の邪によるものと認識が変わっていくことで漢字も「醫」に変わったと考えられます。
酉
酒樽、つまり酒を意味します。
傷口を酒で治すなど医療に使われていたことが「殹」に「酉」を合わせて「醫」という漢字ができた由来と言えます。
漢方において酒は薬膳として
血行を良くして身体を温める効能があるため、冷えからくる身体の不調に有効な食材です。食材の成分を出やすく吸収を促進させる効果もあり、生薬と合わせて薬酒を作ったり乾物を戻す際に使われたりもします。
酒の主な効果
・血行を良くする➣血が滞ることにより起こる症状(肩こり/腰痛/生理痛など)に効く
・身体を温める働き➣冷えからくる身体の痛み(関節など)を和らげる
用いられ方
・生薬と合わせて薬酒を作る
・乾物(クコの実、高麗人参など)を酒で戻す➣風味が増す、あまりは料理酒にも使える
以上の意味合いを踏まえて考えると
旧字体の「醫」には古くからの日本における医療を象徴している漢字と受け取ることができます。特に「酉」の部分には酒を筆頭として薬膳的な要素が含まれていたため漢方的な意味合いが強く反映されている要素だといえます。
そのため「醫」を構成するほとんどの文字が取られて左上の「医」のみになったことで、漢字を見た時の第一印象としては箱に矢が入っている=執刀などに使うメスのような、外科的な治療に使う物理的な道具という西洋的なイメージが強くなったように思います。
この字の変化からも、これまで主流の医療だった漢方から西洋医学に移行していった背景が伺えます。
■どちらもバランスよく
漢方も万能ではないので、もちろん新手のウイルスや外科的な処置が必要な急性の症状など太刀打ちできないこともあります。
例えば骨折した時は漢方でのアプローチはなかなか難しいものがあります。もうすでに身体に異常が起きてしまい漢方薬で対処できるレベルではないので骨折したら一刻も早く病院に行って外科的な処置をしてもっらた方が安心ですよね😂
ただ、「歳をとったら病気になるのも仕方ない」「身体の具合が悪かったら病院に行って病名をもらって薬をもらって解決する」「とりあえず薬を飲んで対症療法」…のように
現代の日本の医療観は西洋に傾きすぎてしまっている傾向があるのでそれを少し漢方の方にも意識を傾け、バランスよく利用していくことが大切だと思います。
西洋医学、東洋医学どちらが優れてるかとか、どっちのほうが良いのかと優劣をつけるわけではなく
自分の身体の状態をきちんと観察して目的に応じて使い分けていきましょう🙌
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