物事を理解して納得したとき「腑に落ちた」と言いますよね。
「腑」とは胃や腸など、広くみると「腹」のことです。
物事を考えて判断するとき「頭」で考えるという感覚がありますが、
より深く物事を理解する感覚は「腹」で得ています。
因みに「肚」という別の字もあり、「腹」という字がお腹の前面という腹そのものを指すのに対して、「肚」は心の中や考えなど、意識の中心という意味合いが込められています。精神や感情などの意味も込めたいときに「肚」の字が使われることからも「腹」は単純な消化器官ではなくもっと深い意味があることが伺えます。
さまざまな言葉の表現を見ていきながら
自分自身の心と身体が望む答えや自分の本心が宿る「腹」で物事を考える感覚への理解を深めましょう🙌
※混同してしまうため、本文中では「肚」の字は使わず「腹(お腹)」で統一します
■氣が集まる中心の場所
まずお腹は、身体のエネルギーとなる食べ物を取り込む役割がありますのでそのような物理的な観点からも生命エネルギーを養う象徴的な場所といえます。漢方的には外から取り込むエネルギーである食べ物は「地の氣」と表現します。そしておへその下にある「丹田」という場所は氣が集まる場所であり身体の中心、核と捉えられています。
お腹には…
・食べ物のエネルギー=地の氣が取り込まれる
・氣が集まるとされる「丹田」がある、身体の中心
肉体的な観点からも精神的な観点からも氣が集まる重要な場所であることは
お腹が感情、本心、意志が宿る象徴の場所という考え方に繋がり、
「腹」を使った言葉の表現がとても多いことからもこの考え方が日本では昔からあったことが読み取れます。
例えば「腹を割って話す」は本心で語り合うという意味ですがまさに「腹」にこそ心があるから相手の本心を知りたい=「腹を割る」となったとわかります。
「腹を切る」という武士の儀式も「腹」が魂や誠意の象徴であることを誰もが共通意識として持っていたということを痛感させられる言葉です。
「胃がシクシク/キリキリ痛む」という表現もあるように
胃が痛む時は食べすぎたという理由だけでなく精神にストレスがかかった時にも痛みますよね。
この事実からも精神とお腹の繋がりを感じることができます。
お腹が身体の中でも特に重要な場所である…そう言われてみるとたしかに
背中でも肩でも足でもなくお腹に「心」がありそうだと腑に落ちてきませんか…?
■頭と腹を行き来する感情
腑に落ちる
新たな情報は耳や目から入るのでまずは「頭」で受け取ることになりますが、
「腑に落ちる」にこもったニュアンスは頭だけに留まらずさらに心の深いところまで落ちて直感的に理解する感覚です。
「腑に落ちる」「腸が煮える」という「腹」にまつわる言葉の表現が多くあることからも分かるように
感情や本音、心があるのは「腹」という考え方は古くから日本に根付いている考え方です。
物事を理解するというのは新たな知識を自分のものにするという目的に向かって以下のような段階があります。
知る➣理解する➣身につく➣習慣になる(呼吸レベル)
例えば読書で考えてみると…
【知る】
本を読んだ瞬間新たな知識を得る
【理解する】
一度読んだまましばらく放置しておくと本の内容はほとんど忘れてしまうのでもう一度読み直す。そうすることで一度読んだ内容を思い出しつつ新たな発見も得て理解が深まる
【身につく】
さらに3回、4回…と読み返すことで前回読んだ分の知識と新しく発見、理解する箇所が増え知識が立体的に得られる。自分なりに心に残った部分や人生にとりいれたい考え方などをメモするなど自分の中へ取り込んでいくことでより身につく
【習慣になる】
本を読まずとも適材適所で本で得た知識をナチュラルに引き出せる。自分の経験を交えるなどして知識が再構築される。自分の中に落とし込まれる習慣化したような感覚。呼吸するように自分の言葉で話せるから聞き手も違和感がない
この物事への理解の段階を「頭」から「腹」への流れに置き換えると以下のような感じになります。
物事への理解の段階
耳や目などから情報を得る➣「頭」で理解する➣頭から「腹」まで降りてくる➣理解が極まる
頭にくるってどこから?
怒りの感情が湧いたとき「頭にくる!」と言いますがよくよく言葉を見てみると「頭に(怒りが)来る」となります。
怒りがどこかで湧いてそれが一気に頭にまで上昇して怒りが爆発するというわけですが
それこそが「腹」というわけですね。
怒りの表現「頭にくる!」と同じくらい使われる「腹が立つ!」という言葉から分かるように
怒りという感情は腹で芽生えて頭へ急上昇すると考えます。
怒りの感情の芽➢「腹」で本格的に怒りの感情が湧く➢腹➢頭➢怒り爆発
「腹」「腸」「肝」「胃」など、お腹に関わる言葉を使った表現は他にもたくさんあるので見てみましょう📜
腹にまつわる言葉を使った表現一覧
腑に落ちる…深く理解する。心から納得できたときに使う
腹が立つ…怒りを感じる
腹に据えかねる…怒りを抑えられない
腹の虫が治まらない…感情が収まらない、怒りが続く
腸が煮えくり返る…烈火のごとく強い怒りの感情を抱く
腹をくくる/決める …覚悟を決める
腹を据える…冷静になる、心を落ち着ける
肝が据わる…動じないぶれない強い心を持つ、冷静で精神力がある
肝が太い…大胆で物事に動じない性格
肝試し…恐怖体験で度胸を試す
腹の底…本心
腹を割る/見せる…本音を明かす、弱点も含め自分を見せる
腹を探る/読む…相手の本心を探る
腹が黒い/腹に一物…心の底に表面に出していない思惑、悪だくみがある
肝に銘じる…深く心に刻み込む
肝を冷やす/潰す…恐怖や驚きで心が縮む
肝が小さい…臆病
腑抜け…覇氣がない
肝心要…物事の核心や最も大切な部分
胃袋を掴む…料理で心を惹きつけること
■お腹で考える
本心は「お腹」にあるということなので物事を考える時には頭だけでなく「お腹」にまで落とし込んで考えると心と身体に寄り添った生き方ができるという考え方ができます。
「お腹で考える」ということを日常生活で最も意識する機会が多く実践しやすいのは
「食べるとき」です。
バイキングでてんこ盛りに食べ物をよそったり、夜ご飯を食べた後に口寂しくて夜な夜なお菓子を食べたり、お酒の勢いで酩酊しながら暴飲暴食をしたり…さまざまなシチュエーションがあると思いますが
つい自分の容量を超えた量を食べて苦しくなっちゃうことってありますよね?
うっかり食べ過ぎて苦しむのはまさに食べたい欲で「頭」が支配されてしまっている状態です。
こうならないように常に意識していたいことが「腹八分」という言葉です。
自分の身体が必要な量を節度をもってとるということですね。
「お腹」の方は「もう入らないよ!食べたら苦しくなるよ!」と言ってるのに、
「頭」のほうの食べたい、飲みたいという欲にかられてついつい無理して食べて後悔する…
という展開を回避するために一瞬立ち止まって「本当に今必要か」お腹に聞いて考えてみましょう😊
特にこれから寝る体制に入りたいお腹を休めるべき夜ご飯後は一日の中で最も注意したい時間なので
このタイミングで目に入ってきた食べ物、飲み物は封を破る前にいったんお腹と相談です🙌
今までの誘惑を前に無意識で食べていたところを、いったん立ち止まった上で食べるのか食べないのか考える工程を挟むだけでも十分「お腹」で考え意識することになるのでぜひ実践してみてくださいね!
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