漢方において表現される臓腑とは人体の様々な機能を5つの臓(肝/心/脾/肺/腎)と、
これに対応する5つの腑(胆/小腸/胃/大腸)が支え合って機能していると考えます。
5つの臓=五臓は生命活動の基盤である氣血水の生成/貯蔵/運搬を担い、五臓と対になって補佐する五腑は飲食物の運搬/吸収/消化/排泄などを担います。
腑には五臓の対に位置しない「三焦」を含め「六腑」と捉えたとき五臓と合わせて「五臓六腑」と表現されます。今回は体内で五臓がどのような働きをしているのか具体的に確認していきましょう📜
■五臓とは
五臓「肝」「心」「脾」「肺」「腎」それぞれの具体的な働きと合わせて
「開竅」=「対象の五臓の機能が反映されやすい身体の箇所」も確認していきましょう🙌
❑肝
肝の働き
疏泄…全身に「氣」を巡らせる
体を構成する重要な3つの要素である「気」が体内を正常に巡ることで体の機能は正常に働き、
維持されます。
生命エネルギーでそのものでもある「氣」が滞りなく体内を巡ることで心も体も正常に保たれ、そのことは精神の安定にも繋がります。
😞上手く機能しないと…情緒不安定、憂うつ、イライラ怒りやすい
蔵血…血を貯蔵して血流量を調節する
血は日中の活動時には全身を巡り、就寝時の横になって休んでいでる時は肝に貯蔵されています。
運動時には全身の筋肉に、パソコン作業など目を酷使する時には目に…といったように必要に応じて肝に貯蔵している血を使いたい身体の箇所へ送ります。
😞上手く機能しないと…しびれ、眼精疲労、思考力低下
漢方では肝臓に貯蔵されている血のことを「肝血」と表現します。
肝の開竅
筋(筋肉)
肝血は筋に栄養を与えるため
関節運動を支え、体の動きを滑らかにします。
😞肝血が不足すると…関節を動かしにくい、こむらがえり、しびれ などのトラブルが起きる
目
目に栄養を与えるため、
モノを見る、色を見分ける力を養います。
😞肝血が不足すると…視力低下、眼精疲労、ドライアイ などのトラブルが起きる
爪
肝が正常に働いていれば爪はピンクでツヤがある
😞肝が不調だと…ツヤがない、脆くなる などのトラブルが起きる
❑心
心の働き
他の臓腑の機能も心が調整しているため心に不調が起こるとその他の臓腑の失調も起きや少なります。
そのため心は五臓の中で最も重要な臓器とされています。
血脈
心は血の流れの原動力なので安定した拍動で全身に血の栄養を巡らせる
😞上手く機能しないと…動機、不眠、不整脈 などの不調が起きる
神明
神=精神活動、思考活動などを統括する
明=はっきりさせる
精神活動、思考活動など、心を源とする働き全般
😞上手く機能しないと…不安感、焦燥感、不眠、多夢、記憶力減退 などの不調が起きる
心の開竅
舌
血脈が集中しているので心の状態は舌を見るとわかります
😞心が不調だと…舌先が赤い、ろれつがまわらない などの不調が起きる
顔
顔色が良く肌はツヤがある
😞心が不調だと…顔色が悪い、肌にツヤがない
❑脾
脾の働き
飲食物の消化と吸収を担う
運化
取り込んだ飲食物から吸収した栄養を気血水に変えて全身に運ぶ
😞上手く機能しないと…消化不良、食欲不振、食後の眠気、軟便 などの不調が起きる
昇清
清=水耕の精微(食べ物から得た地の氣=栄養)を心、肺、頭など身体の上部に昇らせる
😞上手く機能しないと…ふらつき、めまい などの不調が起きる
昇提
内臓などの臓器を正しい位置に維持させる働き
😞上手く機能しないと…内臓下垂
統血…血が脈管から漏れないように統制させる
脈管の中を血が正常に流れる
😞上手く機能しないと…鼻血、不正出血などあらゆる出血症状が起こる
脾の開竅
肌肉、四肢
脾は筋肉と四肢に栄養を与えてる
運化作用が正常に働いていると四肢の動きがスムーズになる
😞脾が不調だと…身体を動かしにくい
口
脾が健康だと味覚が明瞭でおいしく食事ができる
😞脾が不調だと…味がわからない、おいしく感じないなどの味覚障害 などの不調が起きる
唇
脾が健康だとピンクでツヤがある
😞脾が不調だと…色が暗い、ツヤがない、カサカサする などの不調が起きる
❑肺
肺の働き
氣の生成/運行
外から取り込んこんだ空気=天の氣と飲食物から得た地の氣(水耕の精微)を臓腑に届ける
呼吸
呼吸によって気を循環させる
新鮮な空気=清氣を取り込み、濁氣を出す
肺、咽、鼻を清潔に保つ
宣発
体の内から外へ氣と水を巡らせ、発散させる
水や地の氣(水耕の精微)を全身に巡らせる
皮膚が潤っている、濁氣を出す
😞上手く機能しないと…皮膚の乾燥、風邪を引きやすい などの不調が起きる
粛降
呼吸によって清氣を体に取り込むこと
水や地の氣(水耕の精微)を下(腎)へ降ろすことで余分な水分を尿としてだす(氣化作用)
鼻や咽などの呼吸器を清潔に保つこと
😞上手く機能しないと…呼吸が浅くなる、咳が出る などの不調が起きる
水道通調…水の運行や排泄を調整する
宣発(水や食べ物から得られる地の氣を全身へ巡らせる)と
粛降(水を腎へ送る)の作用で水の巡りを良くする
😞上手く機能しないと…水巡りが悪くなるためむくむ
肺の開竅
鼻
呼吸の際に清氣と濁氣を鼻で循環させるため、
鼻の通りが良く、嗅覚が明瞭になる
😞上手く機能しないと…鼻水、嗅覚が鈍い などの不調が起きる
皮毛
皮膚がしっかりしていて外邪の抵抗力がある
体表面である皮膚を外邪の侵入をから守る肺の氣のことを衛氣といいます。
この衛氣の強さが外邪の抵抗力の強さにつながり、風邪を引きにくい体を作ります。
😞上手く機能しないと…風邪を引きやすい、花粉症、皮膚の乾燥、かゆみ などの不調が起きる
❑腎
腎の働き
蔵精…精氣を貯蔵する
精は生命活動の基礎物質で氣と同じく生命エネルギーそのものと捉えます。
😞上手く機能しないと…不妊、聴力低下、白髪、足腰の衰え などの不調が起きる
水の調整
脾、肺と協力して全身の水のバランスを調節する
体内の余分な水分は尿として出される
😞上手く機能しないと…尿が出にくい、むくみ などの不調が起きる
納氣…外から取り込んだ氣を納める
肺から取り込んだ清氣を体の奥深くにまで引き込み体内に留める
😞上手く機能しないと…息切れ、深く息が吸えない などの不調が起きる
腎の開竅
骨
骨が髄を作り、髄は脳に通じているため
骨格が盤石、記憶力が良い傾向にある
😞腎が不調だと…頭がぼんやり、動作が鈍い、記憶力減退 などのトラブルが起きる
耳
😞腎が不調だと…耳が聞こえにくくなる
髪
漢方では血液が全身を巡り、その余りが髪への栄養となるという考え方から髪のことを「血余」と表現します。腎の精と血は深くかかわりがあるため髪の状態で腎の健康状態がわかる
腎が健康だと髪にはツヤやコシがある
😞腎が不調だと…白髪、抜け毛 などのトラブルが起きる
■先天の精と後天の精
精には先天の精と後天の精があります。
先天の精は両親からもらった精で母胎の氣と血から栄養を受けて生成されたものなので胎児の頃から持っている精です。この精をもって生まれ、人は成長していきます。
後天の精は主に飲食物から生成されます。
そして先天の精と後天の精が合わせて精が成熟する思春期の頃、
「天癸」という生命活動、生殖機能の充実を促す生命エネルギーが発現します。
先天の精…生まれる前から持っている
後天の精…飲食物のエネルギーから生成
漢方では女性は7、男性は8の倍数の年齢を節目に体調に変化が現れると考え、
女性は生理の始まる14歳頃から精が充実します。
■五行色体表で不調の確認
漢方には「五行色体表」という自然と人間の身体とを関連づけてまとめた表があります。
表を縦列に見ながら、不調が現れた身体の箇所や今最も支配している感情などを指標にどの五臓に不調が起きているか確認できます🐣
例えば肝だったら「木」の縦列「怒/目/爪/筋/青」を見ます。肝に不調が起きている時はイライラする怒りの感情に支配されがちで、身体の箇所としては目/爪/筋肉に不調が現れる傾向があります。肝の不調の改善には青(緑)の食べ物をとるといい…
このような捉え方をします😊
五行 | 木 | 火 | 土 | 金 | 水 |
五臓 | 肝 | 心 | 脾 | 肺 | 腎 |
五志(感情) | 怒 | 喜 | 思 | 悲/憂 | 驚/恐 |
五竅(感覚器官) | 目 | 舌 | 口 | 鼻 | 耳 |
五支(体表面) | 爪 | 顔 | 唇 | 皮毛 | 髪 |
五体(構成要素) | 筋 | 血脈 | 肌肉 | 皮 | 骨 |
五色 | 青 | 赤 | 黄 | 白 | 黒 |
表になることでぱっと一目で見やすくなると思うので、
ぜひ身体に不調が起きた際に確認してみてくださいね🌿
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